2009年05月15日

マルシェインタビュー vol.1

今週末(17日)に開催される第21回おびさんマルシェですが、現時点での天気予報(気象庁:15日11時発表)によると降水確率が70%です。
このままでは延期になる可能性がありますので、出店者・お客様皆さんの元気玉を少しだけ、高知市のおびさんロード方面へ向けて送り続けて下さい。

万が一、延期となる場合は明日(16日)の昼頃にスグに情報をUPします。
それまでは出店者リストは上げないようにしておきます。
予めご了承下さい!

こんな時にちょっとおびさんマルシェについて知ってもらおうと、以前から実行委員メンバーで計画をしていたことを報告したいと思います。
「おびさんマルシェblog充実化産業振興計画」(仮称)として、インタビューやエッセイなどを掲載していこう!となりました。

さっそく第21回の開催の前に、実行委員が独断と偏見で選んでインタビューをした第一弾を掲載します。
色々なご意見・ご感想を開催日におびさんロードの路上でお聞かせ下さい!!


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おびさんマルシェ中で一際目を引くカラフルなガラス玉たち。
よく晴れた暖かい季節の午後、マルシェを訪ねて欲しい。
柔らかくなった光に照らされて、きらきらと輝く様々な色のそれらを目にすると、思わず足が止まってしまう自分に気がつくだろう。

「トンボ玉」と呼ばれる細工物。

古くはガラスが発明されてすぐのエジプトの遺跡から発見されたというから起源は紀元前にさかのぼることができる。
日本では正倉院において勾玉と共にガラスビーズが収蔵されているので、おそらくは古(いにしえ)の時代から、その輝きと色彩は様々な人を魅了してきたのだろう。

「おびさんマルシェいちのグッドルッキング・ガイって書いといて下さい」
笑いながら彼は言う。
顎に蓄えられた髭と坊主頭。
お世辞にも爽やかとは言えない彫りの深い顔。
一見強面に見えてもおかしくない彼が優しく見えるのは、瞳がとても人懐っこいからだ。
おびさんマルシェきってのトンボ玉作家、青砥孝一くん(通称カツオ)がこのトンボ玉を創るようになったのはごく最近のことだという。

かつお横顔.jpg

満開の桜がそこかしこで見られる、そんな季節。
彼の創作の現場を見るため、海沿いの町にある工房にお邪魔する。
いつもの人懐っこい顔で彼は僕を迎えてくれた。

よく整理された、手作りの工房で、彼の話を聞く。

カツオ作業場.jpg

トンボ玉製作を始めたのは3年前。それまでは趣味で貝のアクセサリーを創っていた。

「ガキの頃からものづくりは好きでしたね。
端材や竹を使って何かを組み立てたりとか、ごく自然にやってました。
ナイフの使い方を親父に教えてもらったけど、別段誰に教わったとかってのは無いです。」

船員でタンカーに乗っていた父はいつも家にいなかったが、帰ってくる度に、まだ見ぬ異国の話を楽しげに話してくれたという。

高校の頃は自転車部に所属した。
自転車雑誌に載っている旅行記事に心を躍らせた。
「ここではないどこか」に憧れを抱き始めたのはこの頃だった。

高校を卒業した彼は、造船所で働き始めた。

「自転車で日本一周したかったから、金を貯めました。」

倹約しつつ働き続ける日々。
まとまった金が溜まったのは2年後だった。
彼は仕事をあっさりと辞め、ペダルを漕いで、北海道から沖縄まで、日本を巡る。
その期間、およそ10か月。
人生で初めてで、後に彼の人生そのものとなる「旅」の始まりだった。

「それで完全にハマりましたね。」

働いて金を貯めて旅に出る、それが彼のライフスタイルになった。


****


バックパッカー。
お金を切り詰めて、世界中を旅する生き方。
「旅」を続ける生活を単純に「羨ましい」と俗物である僕は思ってしまうのだが、そんな良いものではないと彼は言う。

「学生や旅行会社のパック旅行と、バックパッカーの旅は根本的に違うんですよ。
学生やパック旅行はどんなに遠くへ旅に出ても、日本に帰れば『学生』や『社会人』という保障された身分がある。
バックパッカーとして生きている者の旅は、たとえ地元に帰ってきても続くんです。
それだけじゃない。
自転車や徒歩で移動している旅人は、旅の中で一回は号泣しながら移動してるんじゃないかな。
たとえば北海道なんかで、気温がすっごい低くて、雨とかが降ってて、でもキャンプが出来なかったりして、金もないし。
それでも道は続いてるから前に進まないといけない。
そんな時に前から同じ年代の奴が車で走って来るわけですよ。隣には可愛らしい彼女がいたりして。
そんなの見ちゃったら自分がすっごくミジメで、孤独で、身体は冷え切ってて寒いし。
何やってるんだろうって自問自答しながらただ進むんです。
そんな時の旅は苦痛以外の何者でもない。そして、僕らの旅はそんな事が大半なんですよ。」


****


では、苦痛以外のないものでもないその旅を、今だに続けているのはなぜか。

「旅人には必ず忘れられない景色が絶対あるんですよ。
人って疲れてたり、ハイテンションだったりとか、その時その時、違うじゃないですか。
当然自然のほうも時間や季節で違う訳で。
それが不思議なことに旅を続ける中でガッチリかみ合う瞬間があるんですよ。
パーンと心に飛び込んでくるというか、その瞬間わけも分からず泣いていたりするんです。
 
バックパッカーの中でも、島を愛する者たちが使う言葉なんですけど。
『アイランド・マジック』という言葉があって、島の雰囲気にやられてしまい、島から離れられなくなったりする。」

彼の場合、それは沖縄の海だった。
浅瀬から沖に向けての青のグラデーション。
優しく流れる風。
潮の香り。
空とも違った青のパノラマ。

それら全てが彼に魔法をかけたのだ。
それに出会ってしまった彼は、七転八倒の苦しみがあっても旅を続けて生きて行きたい。
沖縄の海を見て強く願ったという。

「旅に必要なのはまとまった自由な時間とお金。
小説を書いて印税で暮らすとか、そんなことしか思いつかなくて。
(島で生活するだけなら)農業するとかも考えたんですけど。
やっぱり生き物相手だから。
色々考えて、まとまった時間のとれる、好きだったものづくりをしようと思ったんです。」

それまでも貝を使ったアクセサリーを作ってはいたが、しっかりした技術を身につけたかった。
高知に帰って、すぐ市内のトンボ玉教室に通い始める。
が、数回の受講で通うのがめんどくさくなり止めてしまった。
その後の技術は本や技術書を読み漁り、全て独学で身に付ける。 

トンボ玉.jpg

彼の創るトンボ玉にはいつもヴィヴィッドで、強い色彩のものが多い。
旅先で見たもの(海岸に落ちていた貝殻とか限定されたものでなく、その時あったすべてのもの、空気感)がモチーフになっているという。

「旅の中で見たものや出合った人や風や、食べたものや読んだ本、全部が僕になってると思うんです。
意識するわけでもなく、それがやっぱり作品に出るんですね。」
 

彼にトンボ玉の製作の過程を見せてもらった。
「もともとガラスは鉱物だから、熱して柔らかくして加工する。
硬すぎたら加工できないし、柔らかすぎたら垂れてしまって思うような形にならない。
ある一瞬の温度帯だけで作業できるんです。」

カツオ作業.jpg

バーナーノズルから噴出す青色の炎。
その大きさを3ミリ程度に調整して、青砥君はガラス棒を熱し始めた。
ガラスを入れた瞬間、青かった炎がオレンジ色に変わり、ガラスも透明から炎と同じ色へと変わる。
真っ直ぐだったその棒は炎の中で形を替え、丸まり始めた。

「ここからです。柔らかくなったとしても、無理に成型するとダメなんです」

小さなピンセットを使ってつまみ、丸め、伸ばし、混ぜる。
作業時間は数秒から数分の間。
硬くなったらまた炎の中に入れ、適度に熱する。
その作業の一つでもミスると思い通りの物にはならない。
神経を使う、繊細な『瞬間の勝負』なのだ。

「夏場なんか暑くて地獄ですよ。」

赤外線を遮るでかいサングラス越しに彼は人懐っこく笑った。

カツオ作業2.jpg

「僕は、イベントに行けるチャンスがあれば必ず行くことにしてて、色々見てるほうだと思う。
県内のイベントはたいてい行ってるけど、マルシェは別格です。
40組ほどのものづくり作家がジャンルを問わず一堂に会して店を出す、そんなイベントはマルシェ以外に無いじゃないですか。
お客さんとの会話も面白いんですけど、他の出店者との会話の中から、色々学ぶことも多い。
コネクションも広がるしね。
実践的な作品発表の場として、これ以上の場はないと思う。」

くらげ玉.jpg

当面の目標は、資金を貯めて島に移住する事だと青砥君は言う。

「沖縄で活動している作家には結構な大金を稼いでいる人もいるんです。
俗に言う『売れ線』を大量生産して安く、とにかく大量に売るやり方なんですけど。
でも、僕はそれはやりたくない。
流れ作業が出来ないから大変なんだけど、大きいのも、小さいのも、色々な色があって、その中からお気に入りの一つを選んでほしいんです。
誰でも持っているものより、世界に一つしかない、自分だけのお気に入りが僕の作品だったら最高じゃないですか?」 

***** 

よく晴れた暖かい季節の午後、マルシェを訪ねて欲しい。
柔らかくなった光に照らされて、きらきらと輝く様々な色のそれらを目にすると、思わず足が止まってしまう自分に気がつくだろう。
トンボ玉と呼ばれるガラスの細工物ではある。
が、ただのガラス玉ではない。

それは、「カツオ」と呼ばれる旅人が、旅先で見つけたあらゆるものを閉じ込めた、ここでしか手に入らない、世界に一つだけのガラス細工なのだ。


<インタビュー・文 山脇教弘>
posted by みちる at 12:35| Comment(0) | TrackBack(0) | マルシェ作家インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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